5.「口腔がん検診」の種類

口腔がん検診の種別

 口腔がん検診の種類は、段階に応じて異なります。(図12) まず、すぐに受診可能な検診は「①視診・触診(ししん・しょくしん)」です。これは字のごとく、歯科医師が口腔内を、直接目で見て、触れて、がんがないかを確認する検診方法です。痛みは伴いません。これを「非侵襲性(ひしんしゅうせい)」の検査と言います。

 最近では、各地区の歯科医師会でこの視診・触診での口腔がん検診を行うための勉強会が開催されているようです。しかし、見て、触ってわかるがんは、すでに進行がんです。何かしらの外科的手術を要するレベルに至っているケースが多いと思われます。

 次に、もし、視診・触診で「あれ?おかしい...」と思ったら、「②細胞診(さいぼうしん)」を行います。患部に綿棒などを擦りつけその部分の細胞を取り検査をする方法(一般的には検査機関に送り数日後に結果が出る方法)です。これは、傷口を擦るわけですから痛みが伴います。「侵襲性(しんしゅうせい)」の検査といいます。

 そして、その結果、がんの疑いがあるとなれば大学病院を紹介され、麻酔を使っての「③組織診(そしきしん。生検。組織を取り検査分析。 当然、侵襲性)」により確定診断が下るわけです。

 米国でも、以前は歯科医院での口腔がん検診は「視診・触診」が中心でしたが、口腔がんになる人が増加する中で、その発見率が68%とのことから、政府の支援を受け、「非侵襲性(痛みなく)」で、且つ、早期・初期段階での発見が可能なレーザー装置(口腔内蛍光観察装置)の研究開発が開始され、2005年8月に初期モデルが市場導入されました。それが、「①と②の間:VELscope®Vx(ベルスコープ)という装置による口腔健診(スクリーニング)」でした。

 VELscope®Vxに関しては、6章で詳しく触れますが、これは「非侵襲性」で且つ、早期がん(初期がん)の発見や前がん状態(がんになる前の状態)での発見が可能となり、米国において、口腔がんでの死亡率が著しく低下してゆくことになるわけです。残念ながら、日本では、一般歯科医院への浸透はこれからとなります。

口腔がん検診の種類と特徴

※参考:「集団健診(検診)」と「個別健診(検診)」

「健診(検診)」の種類は大きく分けて2種類あります。

「①集団健(検)診」と「②個別健(検)診」です。その違いは、①は言葉通り「集団で受ける健(検)診」で、一人5分などの短い時間で集団で受ける健(検)診のことです。一方、②は時間をかけて一人ひとりを健(検)診する方法です。

「①集団健(検)診」は何人もの検診をするゆえ、「がん」を見逃しても医師に責任はないものとされているため、「②個別健(検)診」の受診をお勧めします。

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