6.口腔内蛍光観察装置 「VELscope®Vx」との出会い

 この「VELscope®Vx」が開発された背景としましては、米国でも、過去、日本同様に口腔がんが増加した時代があり、米国歯科医師会が全米中の歯科医院を巻き込んでその早期発見を目指したキャンペーンを開始したものの、従来の視診触診による検診での発見率が68%にしかならず、結果、発見が遅れた患者から歯科医師を訴える訴訟が頻発し、早期発見率を向上させるために開発・販売された装置なのです。

 蛍光観察装置の中の代表的なものとしてVELscope®Vxがあげられます。そのVELscope®Vxは、1990年代半ばに、LED Dental社(VELscope®Vxのメーカー)の創業者であるPeter Whitehead博士により、カナダのBritish Columbia州Cancer Agency(癌局:BCCA)との共同研究が開始され、米国保険省の助成金プログラムに組み込まれ開発されました。

 それから10年以上の研究期間を経て初期モデル(P10-図7)が市場導入されたのが2006年8月、アメリカ食品医薬品局(FDA)及びカナダ保険局(Health Canada)より医療機器の許認可を受けました。
 その後、2代目モデルが2008年1月に導入され、現行のハンドヘルドモデル(P10-図8)は2011年1月に市場導入された口腔がん検診用の装置です。
 P10-図9のように、口腔内をブルーのレーザーライトで照射することにより、白色ライトではわかりにくい異形成等の粘膜異常を早期発見できる装置であり、米国では外科においても、開腹後のがん組織を切除する際に照射し、がんの範囲を特定する補助装置として活用されている装置です。
 米国全土には10万軒以上の歯科医院が存在しますが、その中の約30%に導入されており、今では、その普及により100%近くの早期発見が可能となっていると聞いています。 
 
 P10-図10、図11のように、一般的な歯科クリニックでは医院の店頭に看板やポスターが貼られているくらい日常的なものとなっています。

 このVELscope®Vxは、2015年3月、日本において正式な医療機器としての申請手続きが終了しました。(注1)

 従って、現在、各地域の歯科医師会で展開が始まった視診触診による口腔がん検診に加え、口腔がんの早期発見の仕組みとして普及が待たれています。
 全国の歯科医院で口腔がんの検診を定期的に患者に勧めることで日本の口腔がん事情は大きく改善されることは間違いないのです。

※(注1)日本では、2015年3月に医療機器として届出をしました。
一般医療機器 届出番号13B1X10181000046

※2017年現在、口腔内をスクリーニングする蛍光観察装置には、上述のVELscope®Vxの他、同じく米国製のオーラルID、日本の株式会社松風が開発・発売開始したイルミスキャン(日本国内医療機器認定取得)があります。

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