2015年5月14日

健康診断と同じ感覚で口腔がん検診を受けましょう

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口腔がんはほかのがんに比べて発見しやすく、早期発見であれば5年生存率は90%以上、完治が十分可能です。一般的に口腔がんになるまでには5~6年かかることから、ご自宅での口腔内チェックに加えて歯科医院での口腔がん検診を受けることで、早期発見・早期治療ができます。

行政が主体となっている口腔がん検診は全国数十か所で実施されていますが、積極的に告知されていない、場合によっては年齢が決められているなど、あまり身近でないのが現状です。

がん全体からみれば約1~3%と低い数値ではありますが、日本では毎年約3,000人が口腔がんで命を落としています。「数値が低い=かからない確率のほうが高いから大丈夫」と楽観視するのはあまりに危険です。絶対に口腔がんにかからない、という保証はどこにもありません。人間ドックや健康診断を受けるように、半年に一度は口腔がん検診を受けましょう。

がんに対する認識

厚生労働省の統計によると、1981年にがんが死亡原因のトップとなり、現在は男性で最も多いのが肺がん、女性では大腸がんという報告がなされています。がん発症のリスクを軽減するために国立がん研究センターが提唱しているのが「禁煙、飲酒の節制、塩分を控えめにする、適度な運動、適正なBMI(体重を身長(m)の2乗で割った数値)の維持」です。これら日常生活でのがん予防のほか、定期的にがん検診を受け、がんや、がんの原因になりやすい箇所がないか、細かくメンテナンスが行われるようになってきました。

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またがんに関する情報が、報道や書物、インターネットなどで容易に手に入る環境にあります。昔は不治の病、かかったら命を諦めなければならないとされていましたが、医療の進歩によって「早期発見であれば必ず治る病気」へと変化してきているとも言えるでしょう。

こうして考えると、私たちのがんに向かい合う姿勢はポジティブなものとなってきたように思われますが、日常でよく耳にする肺がん、大腸がん、胃がん、子宮がんなどに比べて、口腔がんの認知度と認識はまだまだ低いのが現実です。

なぜ死亡率が高いのか?

「食事をすると胃が痛む。胃がんかもしれないので検査へ行こう」「肺がん予防のために禁煙外来に通う」という人はいらっしゃいますが「口腔がん予防のために歯科医院へ健診に行く」という人は数えるほど。

体内に発症するがんは専門医にかからなければ確認できませんが、口腔内は異常がないかどうかを自分の目で見てチェックすることが可能です。それなのに死亡率が高いのはなぜでしょうか?

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日本人の口腔がんを年齢別に見ると、70代が29.1%、60代が26.5%、50代が18.1%となっており、50歳以上が約80%を占めているという報告があります。高齢化社会を迎えた日本では、今後高齢者の口腔がん患者がさらに増加すると予測されています。

口腔がんは自分で初期の段階で見つけることができます。早期発見できれば、それだけ治癒率が高まりますが、口内炎などの粘膜疾患、歯肉がんの場合、虫歯による痛みが原因ではないかといった思い込みや勘違いによって見逃される可能性があり、これが、死亡率が下がらない要因の1つとなっています。

なかなか治らない口内炎がある、しこりや粘膜が部分的に赤くなっていたり白く変色したりしている、などの症状が現れたら、自己判断せず、早めに歯科医院を受診するようにしてください。口腔内環境を整える、口腔内のチェックを習慣化する、気になる疾患があれば速やかに歯科医院へ行く、この3つを実践することで、口腔がんの死亡率は確実に減少していくはずです。

口腔がん死亡率の現状

日本での口腔がん患者の死亡率は「46.1%」
(出典:2013年国立がんセンター) 同、米国では19.1%! (出典:cancer statistics 2013)

口腔がん死亡率の現状

厚生白書による人口10万人あたりの口腔・咽頭がんによる死亡者数は、1975年は男性2.4人、女性1.3人、1995年では男性5.1人、女性2.9人、そして2015年には男性8.6人、女性2.5人にのぼる可能性があると言われています。一方、アメリカの2013年の口腔がんの罹患率は41,380人と日本の約2.7倍ですが、死亡率は7,900人で、日本の半分以下であることがわかります。

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※罹患率
一定期間内における罹患患者(この場合、口腔がんにかかっている人の数)の、対応する人口に対しての割合

また、イギリスやイタリア、フランスなど、先進国の口腔・咽頭がんの死亡率も年々減少しています。しかし日本は罹患率、死亡率ともに増加しており、現在は毎年約15,000人が、口腔・咽頭がんになり、命を落とす人が7,000人を超えているのです。

海外と日本の違い
大きな理由としては、国全体が積極的に口腔がんの早期発見、早期治療に努めているからにほかなりません。現在アメリカでは、半年に一度の口腔がん検診が実質義務化されているほどです。しかし、日本では口腔がんの認知度が低いことに加えて「歯科医院は虫歯や歯周病、入れ歯の治療で行くところ」という認識がまだまだ根強く残っています。

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予防歯科意識の高いスウェーデンやアメリカと日本の歯科定期健診の受診率を比べてみると、スウェーデンは80%以上、アメリカも70%以上と高い数値を示していますが、日本の歯科定期健診受診率はわずか10%未満です。「口腔内の疾患を未然に防ぐ」と「疾患ができてから歯科医院へ通う」では天と地ほどの差があります。

口腔がんに対する認識が高いものとなれば、決して口腔がんは怖いものではありません。口腔がんの5年生存率は60~80%と言われています。初期症状のうちに発見すれば簡単な治療で治すことができ、後遺症もほとんど残ることなく5年生存率が90%を上回るとの報告もなされています。

口腔がんについて正しく理解し、予防・治療することができれば、口腔がん死亡率は劇的に低下するでしょう。

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早期発見の重要性

がんに限らず、どのような疾患も「早期発見・早期治療」が大切です。欧米では口腔がんの早期発見・早期治療を国民に呼びかけ、取り組んだことで、死亡率を大幅に減少させました。口腔がんの場合、初期段階(ステージⅠ)で治療をすれば5年後の生存率は97%以上です。(東京歯科大学様治療実績より引用)浅い口腔がんであれば切除範囲も小さくて済むため、大きな後遺症はありません。

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口腔がんの治療法には手術・放射線・抗癌剤の3つがありますが、最も有力な治療法は手術です。小さながんは簡単な手術で治すことができ、入院の必要がないものもあります。

しかし、進行がんの5年生存率は初期がんと比較し、20%以上も下がります(東京歯科大学様治療実績より引用)。病状にもよりますが、がんを完全に取り除くために舌や顎を切除する可能性があります。このとき患者さんの骨や皮膚を移植して再建しますが、容貌が変わる、感覚が麻痺する、味覚が失われる、噛めない、飲み込めないなど、後遺症が残ることがあります。命こそ助かるものの、その代償は想像以上に大きなものとなるのです。「早期発見・早期治療は人生を大きく変える」と言っても決して大袈裟ではありません。

がん化する可能性のある白板症と紅板症
口腔がんを引き起こす要因はさまざまですが、口の中に白い斑点(白板症)がみられた場合、3~5%の確率でがん化する可能性があります。また、粘膜のただれ、赤い斑点(紅板症)は白板症よりも高い確率でがん化するといわれています。これら白板症と紅板症を前がん病変と言い、速やかに治療を行う必要があります。