患者さんへのメッセージ~口腔がんに対する思い~

あなたの身近に潜む口腔がんの危険性
"がん"と聞いて、皆さんが真っ先に思い浮かべるのは5大がんと呼ばれる「胃がん、大腸がん、肝がん、肺がん、乳がん」だと思いますが、実はお口の中にもがんができることをご存知でしたか?「口にがんができるんですか?」と驚かれる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに口腔がんは、がん全体からみると約1~3%と数値は低いものの、絶対にかからないという保証はどこにもありません。がんにかかる原因はさまざまですが、まず気をつけなければならないのは口腔環境です。

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喫煙や飲酒の習慣がある、歯並びが悪い、被せ物や詰め物が不適合、入れ歯がいつも同じ場所にあたって傷ができているなどが、粘膜の褥瘡(じょくそう=皮膚に持続して刺激が加わることで、皮膚や粘膜に傷ができること)を起こす原因となり、やがてDNAの修復機能に異常が発生して発がんする可能性があります。

日本では八重歯が愛らしいと好印象を持つことが多いですが、実はこれも褥瘡の大きな原因となりますので、抜歯する、矯正で粘膜を刺激しないようにするなど、治療を受けたほうがよいのです。「そんなことで口腔がんになるの?」と首を傾げるかもしれませんが、それだけ口腔がんの原因は見逃しやすい、知らなければ見落としてしまうところに潜んでいるのです。

虫歯や口内炎、歯肉炎が口腔がんの原因となる場合があります。そこにさまざまな要因が重なるケースもありますが、口腔がんにかかる人の1日の歯磨き回数は明らかに低い、という統計が出ています。お口の中を清潔に保っていないということは、それだけ口腔内環境に意識が向いていない=非常に危険な状態、といっても大袈裟ではありません。

食事を摂る、煙草を吸う、お酒を飲むなど、お口の中は想像以上に過酷な環境にあります。それだけしっかりケアするべき体の部位でありながらほとんど歯磨きをしないのは、口腔内を積極的に劣悪な環境にしているのと同じなのです。

体内にできるがんと違い、口腔がんはご自身の目で確かめることができます。食後のていねいな歯磨きはもちろん、明るい場所に鏡を置いて、お口の中を隅から隅までしっかりチェックすることを習慣にしてください。

歯科医院が運命の分かれ道になることがあります
入れ歯を作ってほしいと歯科医院を受診した患者さんに、口腔がんが発見されたケースがありました。残った歯がグラグラして歯肉がブヨブヨ、典型的な歯周病の症状で、まず2本歯を抜きました。しかし治りが悪く、残りの歯を抜いたところ、歯肉が盛り上がったような状態となり、がんであることが判明しました。もしこの患者さんが入れ歯を作ろうと思わなかったら、もしかすると発見が大幅に遅れて命を落としたかもしれません。

また別のケースでは、ご自身は歯周病だと思い歯科医院へスケーリングに通っていたのですが、歯石を取っても症状が改善しません。一部潰瘍を起こしている箇所もあったので検査したところ、口腔がんと診断されました。

これらのケースは何らかの症状が表れていますが、口腔がんの初期症状は、口内炎や歯肉炎、潰瘍と見分けがつきにくいという厄介なものです。なかなか治らない口内炎や潰瘍がある、指で触れるとしこりのようなものがあるなど、気になる症状があったら自己診断せず、速やかに歯科医院を受診してください。

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これからは、虫歯や歯周病、入れ歯治療ばかりでなく、粘膜の状態が正常かどうか、口腔がんの疑いがないか検査を受けるために歯科医院へ行く、という時代です。しかし、定期健診や体調の異変を感じて病院にかかったとき「がんではありません」と診断されたが、実はがんだった、がんの一歩手前だった、ということがゼロではありません。「異常なし」と診断されても、不安や疑問があったら積極的にセカンドオピニオンを受けてください。

※セカンドオピニオン
「第二の意見」という意味で、ある医師から下された診断や治療方針について、別の医師に意見を求めること。