患者さんへのメッセージ~口腔がんに対する思い~

定期健診で早期発見
口腔がんの2大危険因子は、喫煙と飲酒です。ヘビースモーカー、ドリンカーはがんになりやすいと言えます。煙草に含まれるニコチン、タールには発がん性物質が含まれる上、熱による粘膜への刺激が口腔がんを引き起こします。これに飲酒が加わると、煙草の発がん性物質がアルコールに溶け出して舌や口腔粘膜に停滞することで、より口腔がんにかかりやすくなります。

これ以外にも、虫歯を放置しておいて歯が欠け、尖った部分が舌に当たることで慢性刺激となりそこからがんが発生したり、合わない入れ歯を長く使っていて粘膜が傷つき、がんになったりすることもあります。

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口腔がんは初期の段階では痛みがありません。普通に食事ができて、発音にも問題はありません。早期に発見できれば当然治癒率も高くなりますが、進行がんになると治療が困難となります。「痛みや出血がある」「口が開きづらい」「物が飲み込みにくい」「うまく喋れない」などの症状が出ると、がんが口の奥深くに入り込んだ状態で、がんを完全に取り除けたとしても後遺症が残ります。

胃がんや大腸がん、肺がんなど体内にできるがんは、胃カメラ、レントゲン、CTなど特殊な装置を使って検査しなければ見つかりません。しかし口腔がんは目に見えるところにできるので、早く見つかるというメリットがあります。

早期発見のために大切なのは、ご自身のお口の中をしっかりと管理することです。ブラッシングなどで口の中を清潔に保つ、口腔がんの予兆がないか(口内炎、潰瘍、白い斑点=白板症、赤い斑点=紅板症など)口の中を毎日チェックする、定期的に歯科医院で舌や粘膜の状態も診てもらうなど、ご自身でできるケアはさっそく今日から始めてください。

口腔がんの存在を再認識してください
口腔がんの症例写真を見ると、皆さん「どうしてここまで放っておいたのだろう?」と驚かれます。原因はやはり「口にがんができる=口腔がんになる」という認識が低いことにあると言えるでしょう。日本人の年平均の歯科医院通院機会は年3回もありながら、口腔がんの死亡率は46.1%です。これは、口腔がんが治癒困難な病気というわけではなく、多くは「がんだと気づかなかった」ことによる手遅れが原因であることがほとんどです。今一度「口腔がんは存在する」ということを、しっかり認識してください。

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お口の中に限らず、どのがんでも治療法は大きく分けて3つあります。手術による治療、放射線治療、抗がん剤による化学療法。ただし口腔がんの場合は、残念ながら抗がん剤だけでは治りません。

症状により異なりますが、多くの場合手術が選択されます。進行がんの場合、3つの治療法を組み合わせて行いますが、放射線は口腔乾燥という副作用を伴う場合があります。唾液が出なくなってしまうと、(お口が乾燥して)痛みで食事ができない、歯周病で歯を失うなどの症状が起こりやすくなります。なるべくこまめにうがいをして乾燥を防ぎ、食事は硬いもの、熱いものを避ける、歯科医院で適切な処置を受ける(投薬、クリーニング)などのアフターケアを行う必要があるでしょう。

昔は「がんは切除すればよい」でしたが、これからはいかにQOL(Quality of Life=クオリティ・オブ・ライフ(生活の質))を高めながらがんを根治するかが重要となっています。「これまでどおり食事や会話ができる」が我々のゴールであり、患者さんの幸せなのです。

いつまでも食事を美味しく食べ、スムーズに会話ができるのは、健康な口腔内環境であればこそです。なかなか治らない口内炎はありませんか?虫歯を放置していませんか?その入れ歯は合っていますか?口腔がんは、発症率は低いとはいえ対岸の火事ではありません。怖がる必要はありませんが、危機意識は持つべきでしょう。