口腔がんはほかのがんに比べて発見しやすく、早期発見であれば5年生存率は90%以上、完治が十分可能です。一般的に口腔がんになるまでには5~6年かかることから、ご自宅での口腔内チェックに加えて歯科医院での口腔がん検診を受けることで、早期発見・早期治療ができます。
行政が主体となっている口腔がん検診は全国数十か所で実施されていますが、積極的に告知されていない、場合によっては年齢が決められているなど、あまり身近でないのが現状です。
がん全体からみれば約1~3%と低い数値ではありますが、日本では毎年約3,000人が口腔がんで命を落としています。「数値が低い=かからない確率のほうが高いから大丈夫」と楽観視するのはあまりに危険です。絶対に口腔がんにかからない、という保証はどこにもありません。人間ドックや健康診断を受けるように、半年に一度は口腔がん検診を受けましょう。
検査方法は、視診・触診、病理検査、画像診断の3つです。
視診・触診
口腔がんは、目で見て触れることができる部分に発症します。視診では、粘膜が白くなったり赤味を帯びたりしているところや潰瘍がないかを、触診では、指で触れてしこりや盛り上がっているところがないかなどを詳しく調べます。口腔がんの場合、首のリンパ節への転移の可能性があるため、頸部の触診も行います。
光による視診で病変組織を発見
蛍光観察装置は安全な観察方法です。色素剤などは不要で、特殊な光を照射することによって病変組織を発見することができます。患者さまに負担をかけることもありません。
病理検査
1.細胞診
視診・触診を行った結果、がんが疑われる部位の表面組織を綿棒でこすり取り、顕微鏡でがん細胞であるかどうかを調べ、がん細胞の種類、悪性度などの判定を行います。
2.組織診(生検)
より診断を確実にするために、麻酔をして異常がみられる部位を小さく切り取り、病理検査を行う(生検)場合もあります。
画像診断
●超音波検査(エコー検査)
プローブという装置を直接患部の表面に当て、超音波を体内の臓器に向けて発射し、反射してきた超音波を検出して映像化します。産婦人科で胎児の様子を診るときなどに使用しているものと同様です。口腔がんの検査では、頸部リンパ節の大きさや内部の状態、リンパ節への転移がないかを検査します。舌がんや頬粘膜がんが疑われる場合は、小型のプローブでがん病変の大きさや深さを調べます。
●X線撮影
歯科用の口内法撮影とパノラマX線撮影を行います。口内法はフィルムを口の中に入れ、一部の歯と歯周組織を撮影するのに対し、パノラマX線撮影は全体を撮影するもので、歯肉がんが骨に浸潤していないか、転移がないかを調べることができます。
●CT検査
X線を照射し、体内の断層像を3次元で確認することができます。口腔がんの検査では、コーンビーム方式という撮影法で、座った姿勢で照射ができるデンタルCTが多く用いられます。腫瘍の位置や大きさの確認、がんである場合はどのような治療法がよいか判断するときに役立ちます。
●MRI検査
体に電磁波をあて、電子が共鳴して放出したエネルギーをコンピューターで処理し、画像化します。骨や歯以外の軟組織の状態を細かく診断。口腔がんの検査では、腫瘍の大きさ、腫瘍と歯やあご骨との位置関係などを確認でき、がんの診断のほか、治療法を選択する際に使用します。
●アイソトープ検査
ごく微量のアイソトープ(放射性同位元素)を静脈内に注入し、がんが骨に浸潤しているかどうかを調べます。アイソトープは炎症やがんの転移などで骨の再生が活発になっている部分に集積する特性があり、これを利用して骨に口腔がんが転移していないかを調べることができます。
口腔がん検診で異常なしだったからといって、
油断は禁物です。「口内炎」「入れ歯が当たってできた傷が大きくなって潰瘍になったもの」などと診断されたものの、違和感が続いたり口内炎が治らなかったりといった状態が続き、改めて口腔外科を受診したところ、かなり口腔がんが進んでおり、手遅れになってしまったというケースも報告されています。
「異常なし」と診断されても「おかしいな」と感じたら、積極的にセカンドオピニオンを受けてください。それが、あなたの大切な命綱となる可能性があります。
※セカンドオピニオン
「第二の意見」という意味で、ある医師から下された診断や治療方針について、別の医師に意見を求めることを言います。
口腔がん検診・口腔健診