2015年5月31日

使用環境

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室内の照明を落とした状態での使用を推奨しています。
蛍光灯などの光が多く存在する場合、正確な病変の描出ができない可能性があります。


使用方法

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口腔内蛍光観察装置は、口腔内から約8cm~10cm離した状態で観察を行います。(商品によって異なります。)距離が近すぎたり、遠すぎる場合は写真撮影の際に焦点が合いにくい可能性があります。

また、歯牙は強い白色反射(ハレーション)を起こします
歯肉などの比較的、歯牙に近い部分を観察する場合ハレーションが強く観察し難い場合もありますので、その場合は視診・触診による検査結果を重視し、もし異常が感じられたらナビシステムを利用したり、地域基幹病院の専門医に相談してください。

米国での口腔がん検診

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従来は米国でも「視診・触診」だけの口腔がん検診が主流でしが、昨今では「視診・触診」と合わせて口腔内蛍光観察装置での観察が主流となっています。

その背景には、「視診・触診」のみでの口腔がん発見率が約68%と低く、「なぜ発見してくれなかったんだ!」という訴訟が多発した経緯があります。
そこでアメリカ食品医薬品局はいち早く医療機器として認可し、一般クリニックへ導入が開始されました。現在、口腔内蛍光観察装置は米国の約20%以上のクリニックへ導入され、今や、口腔内観察においては不可欠な機器となっています。

また、カナダ保健省でも医療機器認可を受けており、カナダ国内でも広く扱われている機器となっています。


※日本で発売されている口腔内蛍光観察装置は こちら のページをご覧ください。

※注:口腔内蛍光観察装置は、診断機器ではありません。あくまで口腔内の状態を観察する道具であり、診断は歯科医師が行います。
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観察時のポイント

FVLが認められた場合
●炎症性病変との鑑別を考える
咬傷や口内炎などの場合、ターンオーバーの期間を考慮し回復傾向の有無を確認してください。

●対称部位に同様のFVLがないか確認する
対称部位にFVLが確認出来る場合は、比較的良性の可能性が高いです。

●口腔がんの好発部位との関係性を考慮する
FVL病変の部位と、口腔がんの好発部位を考慮し少しでも疑わしい場合は、精密検査の実施もしくは基幹病院への紹介を行なってください。

●良性病変との鑑別をすることが重要
出血などを伴う病変の場合、ヘモグロビンの働きによりFVLとして観察できます。
判断出来ない場合は、ナビシステムをご利用下さい。

●他の検査方法(視診・触診・擦過診・細胞診・組織診など)と合わせて診断する
口腔内蛍光観察装置での感度、特異度はともに100%ではありません。
口腔内蛍光観察装置はスクリーニング機器として使用し、視診や触診での所見と異なる場合には、必ず他の検査方法と併用して下さい。

※注意※
口腔内蛍光観察装置は、補助的診断機器として使用することが原則であり、従来の口腔粘膜検査での異常所見を覆すべきものではありません。
クリニックで判断できない場合や、設備が無い場合は近隣の基幹病院へご紹介をお願いいたします。

口腔内蛍光観察装置について

1. 口腔内蛍光観察装置の種類 2. 病変描出の仕組み 3. 使用時・観察時のポイント

2015年5月14日

健康診断と同じ感覚で口腔がん検診を受けましょう

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口腔がんはほかのがんに比べて発見しやすく、早期発見であれば5年生存率は90%以上、完治が十分可能です。一般的に口腔がんになるまでには5~6年かかることから、ご自宅での口腔内チェックに加えて歯科医院での口腔がん検診を受けることで、早期発見・早期治療ができます。

行政が主体となっている口腔がん検診は全国数十か所で実施されていますが、積極的に告知されていない、場合によっては年齢が決められているなど、あまり身近でないのが現状です。

がん全体からみれば約1~3%と低い数値ではありますが、日本では毎年約3,000人が口腔がんで命を落としています。「数値が低い=かからない確率のほうが高いから大丈夫」と楽観視するのはあまりに危険です。絶対に口腔がんにかからない、という保証はどこにもありません。人間ドックや健康診断を受けるように、半年に一度は口腔がん検診を受けましょう。

がんに対する認識

厚生労働省の統計によると、1981年にがんが死亡原因のトップとなり、現在は男性で最も多いのが肺がん、女性では大腸がんという報告がなされています。がん発症のリスクを軽減するために国立がん研究センターが提唱しているのが「禁煙、飲酒の節制、塩分を控えめにする、適度な運動、適正なBMI(体重を身長(m)の2乗で割った数値)の維持」です。これら日常生活でのがん予防のほか、定期的にがん検診を受け、がんや、がんの原因になりやすい箇所がないか、細かくメンテナンスが行われるようになってきました。

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またがんに関する情報が、報道や書物、インターネットなどで容易に手に入る環境にあります。昔は不治の病、かかったら命を諦めなければならないとされていましたが、医療の進歩によって「早期発見であれば必ず治る病気」へと変化してきているとも言えるでしょう。

こうして考えると、私たちのがんに向かい合う姿勢はポジティブなものとなってきたように思われますが、日常でよく耳にする肺がん、大腸がん、胃がん、子宮がんなどに比べて、口腔がんの認知度と認識はまだまだ低いのが現実です。

なぜ死亡率が高いのか?

「食事をすると胃が痛む。胃がんかもしれないので検査へ行こう」「肺がん予防のために禁煙外来に通う」という人はいらっしゃいますが「口腔がん予防のために歯科医院へ健診に行く」という人は数えるほど。

体内に発症するがんは専門医にかからなければ確認できませんが、口腔内は異常がないかどうかを自分の目で見てチェックすることが可能です。それなのに死亡率が高いのはなぜでしょうか?

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日本人の口腔がんを年齢別に見ると、70代が29.1%、60代が26.5%、50代が18.1%となっており、50歳以上が約80%を占めているという報告があります。高齢化社会を迎えた日本では、今後高齢者の口腔がん患者がさらに増加すると予測されています。

口腔がんは自分で初期の段階で見つけることができます。早期発見できれば、それだけ治癒率が高まりますが、口内炎などの粘膜疾患、歯肉がんの場合、虫歯による痛みが原因ではないかといった思い込みや勘違いによって見逃される可能性があり、これが、死亡率が下がらない要因の1つとなっています。

なかなか治らない口内炎がある、しこりや粘膜が部分的に赤くなっていたり白く変色したりしている、などの症状が現れたら、自己判断せず、早めに歯科医院を受診するようにしてください。口腔内環境を整える、口腔内のチェックを習慣化する、気になる疾患があれば速やかに歯科医院へ行く、この3つを実践することで、口腔がんの死亡率は確実に減少していくはずです。

早期発見の重要性

がんに限らず、どのような疾患も「早期発見・早期治療」が大切です。欧米では口腔がんの早期発見・早期治療を国民に呼びかけ、取り組んだことで、死亡率を大幅に減少させました。口腔がんの場合、初期段階(ステージⅠ)で治療をすれば5年後の生存率は97%以上です。(東京歯科大学様治療実績より引用)浅い口腔がんであれば切除範囲も小さくて済むため、大きな後遺症はありません。

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口腔がんの治療法には手術・放射線・抗癌剤の3つがありますが、最も有力な治療法は手術です。小さながんは簡単な手術で治すことができ、入院の必要がないものもあります。

しかし、進行がんの5年生存率は初期がんと比較し、20%以上も下がります(東京歯科大学様治療実績より引用)。病状にもよりますが、がんを完全に取り除くために舌や顎を切除する可能性があります。このとき患者さんの骨や皮膚を移植して再建しますが、容貌が変わる、感覚が麻痺する、味覚が失われる、噛めない、飲み込めないなど、後遺症が残ることがあります。命こそ助かるものの、その代償は想像以上に大きなものとなるのです。「早期発見・早期治療は人生を大きく変える」と言っても決して大袈裟ではありません。

がん化する可能性のある白板症と紅板症
口腔がんを引き起こす要因はさまざまですが、口の中に白い斑点(白板症)がみられた場合、3~5%の確率でがん化する可能性があります。また、粘膜のただれ、赤い斑点(紅板症)は白板症よりも高い確率でがん化するといわれています。これら白板症と紅板症を前がん病変と言い、速やかに治療を行う必要があります。

2015年5月13日

口腔がん・舌がんとは

死亡原因の1位は「がん」!
口腔がんは、その中で「死亡率35.5%(第12位)のがん!」なのです。

  • すい臓がん:1位(82.4%)
  • 肺がん  :5位(58.9%)
  • 食道がん :7位(44.4%)
  • -------------------------------------------
  • 胃がん  :13位(33.8%)
  • 子宮頸がん:18位(24.0%)
  • 乳がん  :21位(14.7%)
  • 皮膚がん :25位(6.3%)

(出典:2016年国立がんセンター)


口腔がんとは

現在、日本では2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで亡くなっています。まさに「がんは日本人の国民病」と言っても大袈裟ではないかもしれません。現代の医学は大きく進歩して生存率も高くなってきていますが、それでも「がん」と診断されたら動揺し、不安な気持ちになるでしょう。

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そもそもがんとは、どのようなものなのでしょうか?私たちの体は約60兆個の細胞で成り立ち、それが分裂を繰り返すことで新しく生まれ変わっています。細胞1つひとつにはDNA(遺伝子)が1組ずつ入っていて、細胞の働きをスムーズに行えるようコントロールしています。このDNAが傷ついて突然変異を起こすと、異常な細胞が発生してがん化すると考えられています。


年間7,675人の方が口腔がん(咽頭含む)で命を落としています

口腔がんはお口の中に発生するがんで、歯以外のどこにでも発生する可能性があります。舌がん、歯肉(歯ぐき)がん、口腔底(舌の下)がん、頬粘膜がん、口蓋がん、口唇がんがあり、そのうち日本人に一番多いのが舌がん(約60~70%)です。

ときどき「口の中にもがんができるの?」と驚かれる方がいらっしゃいます。それだけ口腔がんは認知度が低いのが現状ですが、頭や喉にできるがんの中では、喉頭がんに次いで多いのが口腔がんです。がん全体からすれば約1~3%と低い数値ではありますが、日本では年間7,675人が口腔がん(咽頭含む)で亡くなられています。残念ながら、この数字は年々増え続けています。

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口腔がんの症状

口腔がんの場合、初期は自覚症状がほとんどありません。痛みがある、食べ物や飲み物がしみる、違和感がある、首のリンパ節が腫れる、なかなか口内炎が治らない、といった症状が出てきたときは、すでにがんが進行している状態です。

目に見える症状として、舌や粘膜の変色があります。ほかにも、しこりがある、ざらざらした突起・潰瘍、口の中の痛みしびれ感、物が噛みづらい、飲み込みにくい、話しづらい、顎や舌を動かしにくいなどの症状が現れます。

●舌がん
歯が欠けたり虫歯になったりして尖った部分がある、詰め物や被せ物の不適合、入れ歯が合わないなど、舌に慢性的な刺激が加わると、口腔がんを発症する場合があります。初期段階では潰瘍やびらんができますが、進行するにつれて、食事のときにしみる、歯ブラシが当たって痛むという自覚症状が現れてきます。さらに進むと、食事をするのが困難になる、言葉が発音できないなどの障害が起こり、がんが舌のつけ根や咽頭部に達すると舌を動かせなくなることもあります。

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●歯肉がん
歯肉がんの多くは上顎より下顎に発症することが多く、奥歯の近くにみられます。初期段階では歯肉が腫れるくらいで、強い痛みはありません。進行すると潰瘍やしこりができ、腫瘍が大きくなって表面がカリフラワー状に盛り上がり、出血がみられます。腫瘍が下顎の神経まで進行すると、下唇の麻痺や歯の傷みを感じることがあり、虫歯と勘違いして放置した結果、治療が遅れるケースも報告されています。がんが咽頭部にまで広がると、顎を動かしにくい、口が大きく開かなくなるといった症状が出ます。

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●口腔底がん
口腔底は舌の下の部分にあたり、がんは前方に多く発症します。喫煙と飲酒が大きく影響していると言われ、近年では女性の口腔底がんが増えていると危惧されています。初期段階では、小さな潰瘍ができる、粘膜が変色して白斑がみられる、充血による紅斑が生じる場合があります。ほとんど痛みを生じないため、かなり進行してからようやく治療を始める、というケースも少なくありません。口の底は狭く、がんが周囲の組織に浸潤して舌や歯肉、下顎骨にまで広がっている場合があります。

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●頬粘膜がん
上下の臼歯の周辺粘膜、口角の後ろなどに発生しやすく、詰め物や被せ物の不適合、合わない入れ歯による刺激、喫煙や飲酒などが原因と考えられています。初期段階は小さな潰瘍やびらんがみられますが、特に目立った症状はありません。進行すると顎下リンパ節や上内深頚リンパ節に約50%の確率で転移します。触ったとき、粘膜の下にしこりやふくらみ、痛みを感じることがあります。

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●口蓋がん
上顎に発症するもので、喫煙や飲酒、刺激物(辛い食べ物など)が要因と考えられています。初期段階では痛みはほとんどありません。進行すると、粘膜の表面が白っぽくなる、赤い斑点ができるなどの症状が現れます。激しい痛みはありませんが、ピリピリした刺激を感じる場合があります。もっと症状が進むと腫瘍ができて、強い痛みを感じるようになります。

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●口唇がん
口唇粘膜と皮膚の境目にある皮膚や粘膜部分に発症します。喫煙や紫外線、アルコールなどが要因とされていますが、口腔内にできるがんに比べて発症率は少ないとされています。初期段階では、口唇の表面が荒れる、かぶれるなどの症状がありますが、進行すると、しこり、潰瘍、びらん、カリフラワー状の腫瘤がみられます。

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口腔がんから大切な命を守るために

快適な食生活は、健康面ではもちろん、私たちの生活に活気と楽しみを与えてくれます。そして会話は、コミュニケーションをスムーズにし、人間関係を豊かにしてくれます。どちらも生きていく上でとても大切なことですが、これらは健やかな口腔環境によって支えられています。それが口腔がんによって奪われてしまうことになったとしたら?

口腔がんの5年生存率は60~80%と比較的高く、初期の段階で発見・治療をすれば、十分に元の生活を取り戻すことが可能です。しかしかなりステージが進んでしまうと、命を救うために手術で舌や顎の骨を切除しなければならなくなり、食事や会話がとても不自由になります。

アメリカをはじめとした先進諸国では、口腔がんの早期発見・早期治療が積極的に行われているため、がんになる確率は高くても、死亡率は減少傾向にあります。しかし、日本はどちらも増加の一途をたどっています。この違いは一体どこにあるのでしょうか?

日本では、ほかのがんに比べて口腔がんの認知度が低いことに大きな原因があります。口腔がんから大切な命を守り、いつまでも健康で快適な生活を送るために、私たちにできることがあります。それは、口腔がんの認識、予防、早期発見、早期治療です。

口腔がんとは、お口の中にできる悪性腫瘍を指します。細かく分類すると、舌がん、歯肉がん、口腔底がん、頬粘膜がん、口蓋がん、口唇がんがあり、一番多いのが舌がん、次が歯肉がんです。発症原因は、虫歯や歯肉炎などで粘膜に慢性的な刺激がある、細菌感染などのほか、喫煙や飲酒も口腔がんの引き金になりやすいと言われています。

口腔がんの自覚症状で多く見られるのが、口腔内の痛みや腫れ、潰瘍、出血、口臭などです。これらを虫歯や歯周病、口内炎といった口腔内疾患だと思い込み、知らないうちにがんが進行していた、というケースも少なくありません。また、初期の段階ではほとんど痛みがないため気がつかない場合があります。

歯肉が腫れる、しこりがある、治りにくい口内炎や傷があるときは、口腔がんを疑ったほうがよいでしょう。

たかが口内炎だと安心していませんか?

ご存知ですか?口腔がんの原因...
口の中の小さな問題から「がん化が始まる」と言っても過言ではありません!

  • 口内炎
  • 歯列不正(歯並びが悪い)
  • 義歯不適(入れ歯が合わない)
  • 舌・頬の圧痕(恒常的に歯の痕が付く)
  • 咬傷(口の中の噛み傷)
  • う蝕(虫歯)
  • 歯周病
  • 詰め物・やぶせもの不適
  • 舌小帯付着異常(舌の裏の紐のような部分)
  • アマルガム(金属の詰め物)

たかが口内炎だと安心していませんか?

口内炎とは、文字どおり口腔内の粘膜に起こる炎症で、多くは頬の内側、舌、歯ぐきなどにでき、小さな白い円形のものから赤く腫れて潰瘍を引き起こすものがあります。食べ物や飲み物がしみる、歯磨きのとき歯ブラシが当たると痛む、会話しづらくなるなど、不快な症状を体験した人は少なくないでしょう。

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直径1mmくらいのものから約1cmの大きさまでさまざまですが、多くの場合、2週間くらいで治癒します。そのため口内炎ができても「ほっておけば治る」「大したことはない」と思われがちですが、口内炎を繰り返すことによって口腔がんを発症する、口内炎だと思っていた症状が実は口腔がんだった、ということもあるのです。2週間以上経っても口内炎が治らない場合は、速やかに歯科医院にかかるようにしましょう。

口内炎の種類
●アフタ性口内炎
誤ってお口の中を噛んでしまったとき、粘膜が傷ついたり、疲れやストレスによって起こったりする口内炎です。白い円状の腫れができて周囲が赤く腫れた状態となり、食べ物や飲み物などがしみて激しい痛みを感じます。1~2週間で自然治癒しますが、痛みがあると食事を摂りにくくなるため、ステロイド剤の軟膏を使用して早期治癒を促します。

※アフタ性口内炎、実はベーチェット病の可能性も
アフタ性口内炎だと思っていたらベーチェット病だった、というケースがあります。ベーチェット病は、アフタ性口内炎、結節性紅斑などの皮膚症状、眼のぶどう膜炎、外陰部潰瘍を主症状とする全身的な炎症性の疾患で、それぞれが消失と再発を繰り返します。
1972年に厚生省が難病に指定した疾患ですが、未だ詳しい原因はわかっていません。
症状に応じた治療が行われますが、口内炎にはステロイド外用薬が使用されます。

●カタル性口内炎
歯の被せ物が合っていない、矯正装置が粘膜に強く当たるなどで起こる口内炎です。口腔内の粘膜が赤く腫れ、触ると痛みがあります。歯科医院で原因となる部分を治療、調整する必要があります。

●潰瘍性口内炎
虫歯で歯に尖った部分がある、入れ歯が当たるなどで起こる口内炎です。粘膜の表面に深い潰瘍ができ、周囲が赤く腫れて白い膜のようなもので覆われた状態となります。虫歯の治療と入れ歯の調整を行うことで症状が改善します。

●ウイルス性口内炎
ウイルスや細菌の感染によって起こる口内炎で、ヘルペス性口内炎、カンジダ性口内炎などがあります。多く見られるのはヘルペス性口内炎で、日本人は20~30代で約半数、60代以上ではほとんどの人が感染していると言われています。生後半年から3歳くらいの乳幼児がかかりやすく、一度感染するとウイルスが体内に残り続けるため、疲労や抵抗力の低下で繰り返し再発する場合があります。

ウイルス性口内炎の症状としては、最初に発熱や倦怠感があり、高熱のあと唇や口の中の粘膜に小さな水疱ができ、破れて潰瘍(かいよう=粘膜が傷つき、内部からえぐれたような状態になること)を起こします。

※ほかの口内炎と違い、ウイルス性口内炎は唾液から人に感染する危険性があるので、症状がある場合は食器やタオルなどの共有を避けてください。

<カンジダ性口内炎>
カンジダ性口内炎は、口腔内にカンジダというカビが増殖して起こる真菌性口内炎で、唇の裏側、頬の内側、上顎に薄くて白い膜ができます。この膜はこすると剥がれるのが特徴で、剥がした場所は赤く腫れています。初期にはあまり自覚症状がありませんが、飲食時や歯ブラシが当たると痛みを感じるようになります。真菌であるカンジダ菌に抗生物質は効かないため、抗真菌薬で口腔内を洗浄する塗り薬を使用します。

もともとカンジダは常在菌で、抵抗力が低下しているときに発生しやすいとされていますが、体力が弱い乳児や高齢者、血液疾患や糖尿病にかかっている場合も起こりやすくなります。また、カンジダ菌が喉の奥まで広がると呼吸困難を起こす可能性があるため、速やかに歯科医院や皮膚科、口腔外科で治療を受けるようにしましょう。

淋病やクラミジア、梅毒などのSTD(性行為感染症)が原因で起こる口内炎があります。どのようなウイルスが原因となっているかを診断し、適切な治療を行う必要があります。たかが口内炎と考えずに、歯科医院や皮膚科、口腔外科などにかかるようにしてください。

●アレルギー性口内炎
アフタ性口内炎のように、頬の内側、唇、舌などに白色の潰瘍ができて周囲が赤く腫れ、痛みがあります。原因としては、銀歯や義歯に使用されている金属、果物や野菜(トマト、キウイ、マンゴー、グレープフルーツなど)、薬などによるものが考えられます。

金属が原因の場合は、歯科医院で銀歯や義歯をアレルギーが起こらない素材(メタルフリー)に替える、食事や薬の場合はそれらを摂取しないようにすることでアレルギー性口内炎の発症を防ぐことができます。投薬治療では、ステロイド剤や抗アレルギー剤を一定期間服用する方法があります。

※歯科金属のパッチテストは、歯科医院や皮膚科で行っています(行っていない医院もありますので、あらかじめ確認してください)。
※食物が原因と考えられる場合、大人はアレルギー科、内科、お子さまは小児科での検査を受けてください。

●ニコチン性口内炎
愛煙家に多いとされるニコチン性口内炎は、舌に白い斑点がある、上顎に白っぽいシワができて厚くなり赤い斑点ができるという症状がみられます。ほかの口内炎ほど激しい痛みはありませんが、ピリピリとした刺激を感じることがあります。

煙草の煙が持つ熱が口腔粘膜を刺激するほか、熱によって口腔内が乾燥すると、殺菌作用や粘膜を保護する働きを持つ唾液の量が減少し、細菌が発生しやすくなります。また、飲酒と喫煙を同時に行うと、煙草に含まれている発がん性物質がアルコールに溶け出して口腔粘膜に影響を及ぼすとも言われています。

喫煙者の口腔がん発生率は非喫煙者の約7倍とも言われています。ニコチン性口内炎の最大の予防は禁煙しかありません。

危険な口腔粘膜疾患

●がん化の可能性がある白板症(はくばんしょう)
舌や頬の粘膜、歯肉の一部が白くなるもので、食べ物がしみる、歯ブラシが当たると痛いなどの症状があるため、口内炎と間違えることがあります。口内炎は約2週間で治癒しますが、白板症の場合は範囲が広がり、白い部分が厚く盛り上がって、びらん(粘膜の浅い欠損)や潰瘍、しこりがみられるようになります。びらん、潰瘍、しこりを伴う場合、初期の口腔がんの可能性があるため、組織を取って検査をする必要があります。

原因は、義歯の不適合、ガルバニー電流(歯に詰められた金属によって発生する口腔内電流)、ビタミンA・Bの不足、喫煙などで、歯科的治療、ビタミンの投与、禁煙などの治療を行います。びらん、潰瘍、しこりがある場合はがん化する可能性が高いため、切除する場合があります。

●がんになっている可能性が高い紅板症(こうばんしょう)
舌や歯ぐきなどの口腔粘膜の一部が鮮紅色になり、あきらかに周囲と色が違うのがわかります。食べ物や飲み物、歯ブラシが当たると刺激があり、50%ががん化する、もしくはすでにがんになっている可能性が高い疾患です。50歳以上の方が紅板症の80%を占めていますが、それ以下の年齢でも発症する可能性は十分にありますので油断できません。がん化の可能性がとても高いため、手術によって切除します。

2015年5月 1日

口腔内蛍光観察装置 VELscope®Vx(ベルスコープ)について